9/18/2010

Message In A Watch

久々のブログです。モーレツに暑かった今年の夏もいい加減そろそろ終わりですかねぇ。まだまだ残暑厳しい毎日ですが、だんだん秋の気配を感じるようになってきました。夜になるとちょっとだけ涼しげな風が吹き、どこからか鈴虫が鳴いているのが聞えてくるようになりました。そんな今日この頃、珍しく時計屋らしく時計のネタを少々。

年代物の機械式時計の中でバツグンの知名度を誇るオメガですが、言わずと知れた30ミリキャリバーは何かと評価も高く、実際コンディションが良ければ安定した精度も期待出来ます。バリエーションも豊富で、流通量もそこそこなので、手頃な価格で入手出来る場合も少なくありません。一部の軍用時計、その他ランチェロやレイルマスターなどのレアモデルは別格ですが、そうでなければそれほど高額になることはないので、一定の人気があります。そんなわけで、当店でもこれまでかなりの本数を取り扱ってきています。

先日オーバーホールの依頼でオメガの軍用時計をお預かりしました。いわゆる30mm系のムーヴメント"Cal.30T2"を搭載した英国陸軍用で、文字盤には大きなスモールセコンドがレイアウトされたあのモデルです。この機種も以前は相場的に結構リーズナブルなものが多かったのですが、やはりそこは軍用なわけで、今や美品を入手するのは簡単ではなくなってきています。今回お預かりしたものは持ち込まれた段階ではまったく動かない状態で、相当長い期間ほったらかしにしたままだったとのことでした。ケースにもサビが出ていましたが、ムーヴメントをある程度分解してみると内部にもサビが出ている箇所が結構ありました。当然オイルは残っていないし、完全に汚れた状態。これじゃ全然動かなくても仕方ないよねぇっていう感じでした。

ゼンマイの入る香箱を外して地板を見るとそこには何者かが残した謎のメッセージが刻まれているじゃありませんかっ!恐らくかつて整備をした誰かがサインをしたのでしょう。最初何かの暗号かと思ってしまいましたが、よくよく見てみると"1-11-74"と刻まれています。きっと1974年1月11日ってことでしょう。あとはイニシャルか何かですかねぇ。以前も裏蓋の内側に書かれたサインについてブログのネタにしたことがありましたけど、ムーヴメントそのものに直接日付なんかを残すっていうパターンはなかなか興味深かったので、思わず写真を撮ってしまいました。

でも、ムーヴメント自体にわざわざ傷を付けるのはどうなんでしょう。整備した日付なんかが分かるようにするのなら、全バラしないと見えないような場所にするべきではないでしょうし、やっぱりワタクシ的にはいかがなものかと思ってしまうのです。とはいえ、これがこの時作業したその人のスタイルだったんでしょうねぇ。とにかく、良い悪いは別としてこれってちょっと珍しいと思いました。

ところで、このオメガ、当初はまったく動きませんでしたが、オーバーホールの際に新しいゼンマイと交換し、多少の加工調整を行い、すっかり生まれ変わったかのように調子良く動いてくれるようになりました。およそ60年も前に作られた時計で、完全に動かなくなっていたとしてもこんな風に結構ちゃんと使えるようになるもんです。そんなところも含め、過ぎ去った長い月日を感じさせてくれるところが古時計の一番の魅力じゃないでしょうか。



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