10/31/2013

Walk on the Wild Side

早いもので、今日で10月も終わりです。ホントにいつも同じようなことばかり書いていますが、今月もあっという間でした。ヒマなようで、実は何かと忙しい毎日を過ごしていると時間の経過はただただ光の速さのようにすら感じます。

ところで、ちょっと前にウチの店のサイトにアップしたブローバの角型時計はご覧いただきましたでしょうか。いわゆる「角金」ってやつです。ケースはメッキだし、特別珍しいものではありませんが、あえて話題にしたいと思います。

一般的にはまったく有り難く思われないジャンルの時計ですが、あまり値段に反映されないっていうだけでこういうモデルも実際はこの世にひとつしかないモノホンのアンティークウォッチであることに変わりありません。ある意味では100万円、200万円する高額なモデルとまったく一緒なのです。特に角型の時計はケースがデリケートなので、汗や湿気、埃などの影響を受けやすく、状態の良好なものが極端に限られます。なので、オリジナル性が保たれたものは今や結構貴重だと言えます。

アメリカの製品はなんでも大雑把だとか、そもそも作りが悪いなど、良いイメージを持っていない人も多いかも知れません。料理は大味だとか、衣料品なんかも縫製が悪いとか、人はみんなテキトーだとか、そんな印象もなくはありません。実際ワタクシもちょっとそんな風に捉えています。しかしながら、時計製造についてはその辺がちょっと違います。

その昔、アメリカでは大陸のスケールの大きさゆえに鉄道の発展が国の発展にとっても大変重要でしたが、その影には米国生まれの時計メーカーの力も大きかったと言われています。ポケットウォッチの世界ではおなじみの鉄道時計。アメリカの時計産業の発展と鉄道の歴史は切っても切れないものだったワケです。大きな発展を遂げた鉄道と時計の世界。アメリカならではの歴史的背景があり、スイスとは異なる方法論で成長しました。

合理的に量産し、さらにメンテナンスしやすい作りになっている点だけでなく、見た目的にムーヴメントの仕上げもさほど凝っていないせいもあってか、今日の古時計の市場では評価に繋がっていないようですが、一方でとても工夫されている部分もあります。この画像のモデルをはじめ、古いブローバは石数を増やし、受石(蓋石)を設けることでオイルがより長く良い状態を保てるように考えられています。

これはアメリカの時計メーカーでは最も評価されているハミルトンでも見られないブローバならではの特徴で、本来であればそこはもっと注目されても良いのではないかと思います。前述のように角型ケースは外部からの様々な影響を受けやすく、オイルが劣化したりしやすいというマイナス面もありますが、それを補うために工夫されているワケです。15石程度のベーシックなものでも十分なのですが、他社との差別化を図るためにこのような仕様のムーヴメントを多く手がけていたのではないででしょうか。どちらかというと普及品かも知れませんが、そんなモデルでもこういった仕様にしていたところに当時のブローバの心意気を感じます。

のちにスイスはもちろん、日本製の時計でも石数の多さで高級品であることをアピールするようになったりしますが、手巻き式にもかかわらず、まったく意味のない歯車に何個もルビーを埋め込んだ
30石なんてモデルなんかも登場します。正直馬鹿げているとしか思えませんが、それもかつての流行だったと思えば、それはそれで面白いと思えるものの、やはり利益を生むことだけが優先されるようになった結果なのだという気がしてなりません。

いずれにしても、こういうブローバなんかはそれほど高額じゃありませんので、あまり気にせずガンガン使うのもアリなんじゃないか、などと考えたりもします。もちろん完全な非防水なので、直接水に濡らさないように注意すべきですが、あえてワイルドに使うのも悪くないかも知れませんねぇ。汗や湿気、強い衝撃に注意さえすれば、全然フツーに使えますから、こういうタイプの時計こそもっと気軽に使って欲しいものです。ふと、そんなことを思う10月最後の今日です。




そういえば、ルー・リードが亡くなったそうですねぇ。アメリカのロックミュージシャンの中では独特の存在でした。1980年代に日本のミュージシャンも出演するフェスが神宮球場で開催されて、その模様がテレビで放送されましたが、当時その映像を観たワタクシにはこの人の良さはまったく理解出来ませんでした。"The Velvet Underground"での活躍も忘れてはいけませんが、やっぱりこの曲でしょうか。「ワイルド・サイドを歩け」っていう邦題もイカしてます。囁くような歌声、詩の世界観。ヒップホップなんかでサンプリングされたりしているのも頷ける不思議なグルーヴ感のある曲です。



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