そこそこ長いこと古時計の世界で生きてきましたが、いまだに初めて知ったり、これまで気付かなかったことに気付いたり、ちょっとした発見があったりなんてことが結構あります。例えば、「この文字盤にはこの針が付くのが正解」とか、その逆に「この文字盤にこの針が付くはおかしい」とか、当たり前のこととして認識されていることがあっても、そういった定説が必ずしも正しいとは限りません。なんせ時計が作られていた時代は何十年も前だし、その当時のことを完全に知っている人なんていないのですから、当然といえば当然です。ある時、古い広告に描かれたイラストを見て「この時計にはこういう組み合わせもあったのか!」なんてことになったりする場合もあるわけです。
今回話題にするのはロンジンの手巻きのムーヴメント。ロンジンの中でわりと多くのモデルに採用されていて、しかも年代物特有の質感の高さが比較的手ごろな価格帯で楽しめるという点で最も取り扱う機会が多いのは"Cal.10.68Z(N)"とか、"Cal.12.68Z(N/ZS)"あたりなのですが、つい先日販売した"Cal.27.O"というムーヴメントを搭載したものは意外と数が少なく、思えばこれまで取り扱った回数は数えられるほどだったかも知れません。前述のふたつと同じような特徴を持ち、しっかりと重厚感のある年代物らしい作りの部品で構成されたムーヴメントは古いロンジンに共通した最大の魅力です。
そんな意外とレアなこのムーヴメント。主に金ムクのケースに採用されていたようで、つまり高級機種だったことがうかがえます。実際過去に当店で取り扱ったものはすべてイエローゴールドケースだったと記憶しています。丸穴車や角穴車はとても美しく磨き上げられ、2番車には穴石が入っていて、さらにテンプ回りに目を向けるとブレゲヒゲが採用されています。確かに普及モデルとは言えない立派な仕様です。"Cal.12.68Z"あたりは仕上げの違いや耐震構造の違いなど、いくつものバリエーションが存在していて、正直ワタクシにもよく分かりませんが、恐らくこちらは細かな違いはないかと思います。
今回ウチの店のサイトに掲載する際に気付いたのがこのムーヴメントの名前です。この"Cal.27.O"というのは今までワタクシは「ニジュウナナ・ゼロ」だと思っていましたが、これがどうやら「ニジュウナナ・オー」らしいのです。当店で所有しているロンジンのムーヴメントが大量に紹介されているバカでかい洋書を調べてみて初めて気付きました。確かにロンジンはムーヴメントの名称には末尾にアルファベットが付くものが多く、そう考えると「オー」と読む方がむしろ自然です。これまでまったく疑いもせず、地板の刻印をてっきり「ゼロ」だと思って疑いもしませんでした。どうでもいいような話ですが、これが最近気付いたことなんです。
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