ゴールデンウィークといえば、ウチの店はわりと静かなことが多いので、ここ数年は定休日の他にもう一日だけお休みさせていただいています。そんなワケで昨日、一昨日の二日間はちょっとだけ足を延ばして家族で温泉に浸かりに行ってきました。普段の疲れを癒すつもりだったのに渋滞や人混みのおかげでむしろ疲れて帰ってくるハメになりましたが、それでもたまにはいつもの生活を離れてみるのは悪くないもんです。
二日間ほど休んで今日からまたフツーに営業しているのですが、天気もいいし、代官山の近所ではイベントなんかもやっていたりするので、どうにもこうにも仕事モードにならない。はっきり言って昼間から一杯やりたい気分です。やりかけの作業を進めるべきなのかも知れませんが、なんとなく思い立ってほったらかしのブログなんぞ書いてみようかと思い、久々にキーボードを叩いているところです。
なにか修理関連の良さげなネタはないかとPCに保存しているこれまでデジカメで撮影した画像を捜索していたところ、こんな画像を見つけました。激しくひん曲がった注射器型のブルースチール針は夜光部分も剥がれ落ちていて、とてもこのまま使えるような状態ではありません。持ち主の方が腕に着けていたら、突然風防が外れて弾け飛んだ瞬間に針を引っかけてしまいこんな状態になってしまったらしく、当店に相談されたのでした。
うまいこと曲げなおして夜光を乗せ直して元の状態に組めば、フツーに使えるようになるはずですが、これだけ威勢よく曲がっていると多少の痕跡が残ってしまうだろうし、なにより運が悪いと折れる可能性だってゼロではありません。確かそんなリスクがあることを説明して納得してもらった上でお預かりして作業を進めたような気がします。
慎重に、かつ思い切って正常な状態を目指して曲げていくと思いのほかすんなり出来たことを思い出しますが、正直こういう作業はなかなかの緊張感です。上手くいったからいいようなものの、万一のことを考えるとゾッとしてきます。昔の時計で使われていた針は針そのものの厚みがあり、わりとしっかり強度があるところも特徴だったりしますが、それでも夜光が乗っているタイプの針は細い部分もあり、折れたりする可能性も高くなります。おまけにサビが出ていたりすると結構危ないのですが、この時の針はサビによる傷みもほとんどなかったのが良かったのだと思います。
あとは文字盤の夜光部分の色を参考にして針の夜光を入れ直して組み立てるだけなのですが、そもそもなぜ針が曲がってしまったのかを考えてみると風防が外れたことが直接的な原因だったワケです。本来は外れるようなことがあってはいけませんが、プラスチック製の風防が取り付けられている古時計の場合、サイズがビミョーに合っていないわずかに小さいものが取り付けられていたりすることもあります。
さらに樹脂系素材の特性として気温などの変化によって伸縮することも関係してきます。暖かい季節にはわずかに膨張しているおかげでビシッとしている風防が秋から冬にかけて寒い時期を迎えると今度は逆にわずかに風防自体が縮まってしまい、結果的に外れてしまったりすることもあり得るのです。気になって調べてみたろこと、このギャレットをお預かりしたのも11月だったようです。やっぱり...ですねぇ。寒くなり始めた途端、風防が外れるパターンは決して珍しくありません。前述のようにサイズが合っていなかった風防や長年経過しているせいで元々の状態よりも僅かに小さくなってしまった風防は寒さとともにゆるみが出てきて、簡単に外れてしまうようこともあるワケです。
そういう場合、大抵は指で風防をつかんだ時に風防がクルクル回転するようになるので、そういった症状が出ている場合は早めに交換した方がベターです。恐らくこのギャレットもそのような前兆があったはずで、その時点で気づいてすぐに使うのを控えていれば、このような作業をする必要もなかったかと思います。暖かい季節には問題なくても寒さとともに風防が回せるようになっていることが発覚したら、素直に新しいものと交換しましょう。
さて、そろそろ途中だった作業を再開させなければなりません。まだまだゴールデンウィークは続きますが、当店はいつも通り営業しておりますので、都内でブラブラしているなんて方は是非お立ち寄り下さい!
Horol International